2007年 03月 26日
制作とは足下見つめたり 上 |
吉岡文平
私の下駄箱の下段には、三足のスニーカーが並んでいる。どれも見事に履き潰してしまい、浸水はもちろん 爪先や踵に風を感じるものまである。これらは『ラザロ』三篇のそれぞれのクランクイン直前に購入したものだ。合宿ロケが多かったこともあり、撮影中はずっとその時買った靴ばかり履いていた。別に験担ぎなどで始めたわけではなかった。きっかけはこうだ。
最初の「蒼ざめたる馬」篇・京都ロケの際、鍋島カメラマンと私は 新幹線で到着するやいなや、学生スタッフの車に乗せられてロケ地の確認に連れ出された。クランクインまでほとんど時間がないのでやむを得ないことだった。まず“最も重要なロケ地から”ということで、生憎の雨模様のなか案内されたのは山奥の川べりだった。順当に走っても市街地からは相当な道のりだったが、途中道に迷うなどしたため 目的地に到着した頃にはもう薄暗かった。マグライトを照らしながら私たちは現場まで歩いた。泥濘がひどくてとにかく歩きにくい。“所々深みがあるから、嵌らんように気ぃ付けや”と地元の人に言われたそうだ。おまけに“底なし沼みたいになっている”場所もあるらしい。木々が根元から露出し奇妙な姿で辺りを覆っている。おいおい怖いぞ。エライ場所を選んでくれたものだ。
私の下駄箱の下段には、三足のスニーカーが並んでいる。どれも見事に履き潰してしまい、浸水はもちろん 爪先や踵に風を感じるものまである。これらは『ラザロ』三篇のそれぞれのクランクイン直前に購入したものだ。合宿ロケが多かったこともあり、撮影中はずっとその時買った靴ばかり履いていた。別に験担ぎなどで始めたわけではなかった。きっかけはこうだ。
最初の「蒼ざめたる馬」篇・京都ロケの際、鍋島カメラマンと私は 新幹線で到着するやいなや、学生スタッフの車に乗せられてロケ地の確認に連れ出された。クランクインまでほとんど時間がないのでやむを得ないことだった。まず“最も重要なロケ地から”ということで、生憎の雨模様のなか案内されたのは山奥の川べりだった。順当に走っても市街地からは相当な道のりだったが、途中道に迷うなどしたため 目的地に到着した頃にはもう薄暗かった。マグライトを照らしながら私たちは現場まで歩いた。泥濘がひどくてとにかく歩きにくい。“所々深みがあるから、嵌らんように気ぃ付けや”と地元の人に言われたそうだ。おまけに“底なし沼みたいになっている”場所もあるらしい。木々が根元から露出し奇妙な姿で辺りを覆っている。おいおい怖いぞ。エライ場所を選んでくれたものだ。
by spiritualmovies
| 2007-03-26 21:21
| エッセイ